事業の回転資金を得るためのファクタリング

お金

会社が倒産する時というのは、一般的には営業不振が主な要因になっていますが、稀に業績は順調に伸びているのに倒産する会社があります。それが、俗に言われる黒字倒産です。

得意先に対する営業においては、好調に商品を販売できているのですが、販売代金のほとんどが売掛債権になっているため、現金による回収ができていません。つまり、売上の数字は上昇していますが、仕入商品の支払いや、従業員の給与などに支払うためのお金が足りない状態になっています。財務的に言うと、キャッシュフローが破綻したということです。

そこで、売掛債権を現金に換えられれば、キャッシュフローが改善されます。売掛債権を現金に換えることが可能な手段があり、それがファクタリングです。

なお、ファクタリングについては資金調達プロのファクタリングカテゴリーのコンテンツ(https://shikin-pro.com/guide/3942)が非常に充実していますので、ぜひ参考にしてみてください。
参考:資金調達プロ

2種類のファクタリング

ファクタリングというのは簡単に言うと、「売掛債権(売掛金)」をファクタリング業者に売却して現金に換金することです。ファクタリングによって現金が手に入れば、仕入代金や経費など事業を運営していくために必要な支払いに充てることができます。そのファクタリングには「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」があります。

2社間ファクタリング

2社間ファクタリングとは、売掛債権を売却したい会社とファクタリング業者の2社間で契約を結ぶタイプのことです。契約が結ばれると、ファクタリング業社は売掛債権の買取金額から手数料を差引いた金額を売却の依頼会社に支払います。差引いた手数料がファクタリング業社の利益になります。

売却がなされた時点で、売掛債権はファクタリング業社のものになりますが、ファクタリング業社は売掛先への回収作業を行うわけではありません。つまり、売掛債権の支払期日が到来すると、従来通り依頼会社が売掛先に対して代金の回収を実施し、回収金額をそのままファクタリング業社に送金します。

売掛先を含む3社間ファクタリング

3社間ファクタリングとは、依頼会社・ファクタリング業社・売掛先の3社間で交わすファクタリングのことです。3社間ファクタリングが結ばれると、ファクタリング業社は売掛債権の買取代金を依頼会社へ支払います。なお、2社間ファクタリングとは違い、支払期日になると売掛先は依頼会社(仕入先)ではなく、ファクタリング業社に直接代金を支払います。

2社間ファクタリングでは回収に対するリスクが大きいことや、必ず「債権譲渡登記」をしなければならないため、大手ファクタリング業社は3社間ファクタリングしか取扱っていません。

債権譲渡登記とは、売掛債権の権利が依頼会社からファクタリング業社に移転したということを対外的に明確にするものです。法務局に登記をすることで、ファクタリング業社は第三者に対して債権の所有を主張することができます。ファクタリング業社にとっては事前に依頼会社に買取代金を支払っているため、売掛債権の確実な回収を図るためには、売掛債権の債権譲渡登記が欠かせません。

なお、3社間ファクタリングでは、依頼会社より売掛先の信用情報が重要視されています。

3社間ファクタリングにおけるメリットとデメリット

依頼会社における3社間ファクタリングのメリットとデメリットには以下などが挙げられます。

メリット

1)安い手数料
2社間ファクタリングより手数料が大幅に安くなります。手数料が安いのは、依頼会社に加えて売掛先が契約相手に加わるため、ファクタリング業社にとっては回収不能リスクが大幅に削減できるからです。債権譲渡登記の必要ないことも影響しています。

デメリット

1)売掛先の承諾
売掛先の承諾が必要なため、売掛先に説明した上で承諾書を作成するという手間がかかります。

2)売却までの日数
売掛先の承諾後での契約になるため、売却までに日数がかかることから、緊急時には利用できません。

3)信用力の低下
売掛先に対して売掛金の売却許可の要請をするため、信用を失墜する懸念がが発生します。例えば、売掛先から『あの会社は売掛債権を売却するくらいだから、相当資金繰りが苦しいんだろう』だとか、『新しい仕入先を探した方が良いか』などと思われかねません。そうなると、事業運営に悪影響を及ぼします。

ファクタリングにおける手数料の相場

ファクタリングにおける手数料は、ファクタリング業者によって異なります。当然、依頼会社や売掛先の事業規模や信用情報、売掛債権の金額、決済期日などが手数料に反映します。ただ、一般的に3社間ファクタリングの方が回収におけるリスクの低い分、手数料は安くなっています。

ファクタリングにおける相場は以下になっています。
・3社間ファクタリング:1~5%
・2社間ファクタリング:6~30%

2社間ファクタリングにおいて手数料が高くなっているのは、売掛先からの保証が無いこと、また売掛債権の回収が依頼会社経由になっていることが挙げられます。つまり、依頼会社が売掛先から回収した代金をファクタリング業者に送金せずに、使い込むということが無いとは言い切れません。そのようなリスクが手数料に含まれています。

一方、3社間ファクタリングの場合は、代金を支払う売掛先が契約に参加しており、また代金を直接売掛先から受領できるため、手数料が安くなっています。なお、売掛先の信用力が高ければ高いほど、手数料は安くなります。

ファクタリングと貸付の違い

一般的に、短期での運転資金の借入は貸金業者を利用するケースが少なくありません。当然、資金を貸付ける業者は貸金業法に則って登録した貸金業者です。

仮に、売掛債権を担保にしてローンを組んだ場合は、「貸金」を受けることになります。従って、貸金業者による厳しい審査があるため、審査に通るかどうかは分かりません。また、審査には日数がかかるため、緊急での借入には適しません。

一方、ファクタリングというのは売掛債権の売買ですから、お金を貸す、利息を取る、貸付金を返済してもらう、といった貸金の概念がありません。つまり、ファクタリング業者は貸金業には含まれません。

ちなみに、貸金業者からお金を借りる場合、その利率は以下のように利息制限法の範囲内になります。
・元本が10万円未満の場合:年20%
・元本が10万円以上100万円未満の場合:年18%
・元本が100万円以上の場合:年15%

ファクタリングは数ヶ月後の売掛債権に対する手数料であるため、年利に換算すると、利息制限法の金利をはるかに超える利率になります。これが許されるのは、ファクタリングが単なる売買であって貸付ではないからです。

経済産業省からの推奨

実は、ファクタリングに関しては、経済産業省からも事業資金の確保のためのツールとして推奨されています。以前、経済産業省の発表した「中小企業における資金調達の課題」のレポートの中で、ファクタリングに対して以下の記述があります。「売掛金をはじめとする不動産に依存しない担保の買取・評価システムを確立し、中小企業の資金調達手法を多様化していく必要がある」としています。

従来、事業規模が小さく、事業年数の短い中小企業は営業が順調に伸びているのに、資金力が弱いため事業の継続を断念することが少なくありませんでした。運転資金の借入ができれば問題ないのですが、不動産などの担保を所有していないと、金融機関から借入のできないのが実態でした。そこで、ファクタリングによって売掛債権を売却できれば、キャッシュフローが改善され、事業の継続が可能になります。

しかし、現状では以下の課題を抱えています。
1)債権譲渡登記は法人にしかできないため、個人事業主は2社間ファクタリングを利用できない。
2)3社間ファクタリングは売掛先の同意を得なければならないため、信用失墜に対する懸念から利用に踏み切れない。

ファクタリングにおける社会的な環境整備が構築されないと、利用企業の増加は難しいのが実態です。

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