映画の中から飛び出たお嬢様!?
健司は映画製作に関わっています。ある日、ホコリをかぶったフィルムを見つけます。その古い映画には、おてんばな美雪という女性が出てきました。その美しさに心奪われた健司は、食い入るように見つめます。
ある時、自分の前に美しい女性が現れます。ただ、白黒なのです。そうです、それは映画の中から飛び出してきた美雪だったのです。
健司の家に居候することになった美雪でしたが、映画の中以上に気がきつい美雪で、映画セットをダメにしてしまったり、スターをダイナマイトでふっとばしてしまったり、その勝気な性格で様々なことを引き起こします。ただ、そんな美雪をずっと支えていたのは健司です。彼女の代わりに謝ったり、走り回ったり、散々振り回されるのですが、それでもとっても幸せそうです。
健司はいつも美雪に、お前は私の下部だ!と言われていました。こんな上下関係でも、たまに腹が立って喧嘩しても、結局はまた元通りになれたのです。そんな2人の関係がしばらく続きます。
映画監督になれるかも!?夢に近づく健司
ある日、勤めている映画会社で、若い社員たちは社長からこんなことを言われます。「若い奴らの作品も見てみたい、いい作品は映画にする」と。これを聞いた健司たちは、一発当ててやろうとやる気になります。そんな時、健司は美雪との生活を映画にしようと、彼女との毎日を写真など記録しつつ、毎日脚本の執筆を続けます。その顔はやる気に満ち溢れていて、彼女がいる生活は、健司の生き方までを変えているようでした。
ところで、この若者に映画監督を、という提案は、社長の娘がしたものでした。その理由というのも、娘は健司に好意を抱いており、彼に映画を撮ってもらいたいと思っていたからです。しかし、美雪と楽しそうに歩く健司を目撃し、その表情が曇ります。ある日娘は、美雪に直接尋ねることにします、健司さんと付き合っているのか、と。美雪はとっさに親族だと嘘をつきますが、自分が健司といることは彼のためになっているのだろうかと悩み出します。
さようなら。私は消えてしまうのです。
映画の脚本も美雪との生活も順調で、健司は毎日生き生きと仕事をしていました。ある日、こっそりと赤く輝く指輪を購入し、美雪に渡そうとした健司。2人で夜道を歩き落ち着いたところで、あげたいものがある、と切り出します。この時に健司は美雪との結婚を考えていました。
しかしそこで彼女から聞いたのは、予想だにしないショックなことでした。彼女は、人間の暖かさに触れると消えてしまうのです。彼に触れると、彼にキスすると、抱きしめると、消えてしまうのです。
美雪はずっと悩んでいたのです。大好きな健司に触れられないだけではない、健司にも我慢をさせてしまうのです。
こんなことがあってから、健司の脚本はなかなか進まなくなりました。早くしろよ!と上司から言われると、胸が痛んでいるようです。だって大好きな人との話を、進められなくなってしまったのです。悩んだ健司は同僚に尋ねます。大好きな人と触れずに生きていけるか、と。同僚は、無理に決まってると言います。その会話を、影から美雪が聞いてしまうのです。
それでもずっとあなたを愛してる。
美雪はわざと健司にきつい台詞をはき、家を飛び出します。もちろん行くあてはありません。電話ボックスで立ち尽くしているのを見て、声をかけたのはロマンス劇場のオーナーでした。しばら映画館にいることにした美雪。
その間、会社が倒産して映画監督の話はなくなりました。美雪も消え、健司は意気消沈していました。
ひょんなことから、美雪がいるとオーナーから話を聞いた健司は、ロマンス劇場の二階に駆け上がり、彼女を迎えに行きます。最後にここで抱きしめて、と美雪は泣きますが、健司は触れずにずっと一緒にいることを選びました。
美雪は歳をとりません。健司だけが歳をとります。キスはガラス越し、お散歩は手を繋がず布を持ち合う、それでも2人は幸せでした。
健司が年老いて息を引き取りそうなとき、最後に美雪はわがままを言います。抱きしめさせてくれと。そしてこんなに暖かいんだ、と泣きながらそのまま消えてしまいました。
健司も亡くなり、美雪も消えてしまった後、白黒だった美雪の映画の中は、色鮮やかな世界になっており、映画の中で2人は皆に祝福されながら、愛し合っていました。もう、何にも邪魔されずに大好きな人に触れれる、そんな幸せを2人から感じました。
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